研究概要 |
本研究では,炭素の材料としての特徴,特異性を生かして,1)炭素材料自体の表面修飾,および2)炭素被覆による金属・セラミックス材料の表面修飾による材料の機能性を向上・強化することを目的とした. 1)炭素材料自体の表面修飾:天然黒鉛フレークを劈開し,酸素プラズマを照射することによって表面修飾を行った.黒鉛層面を走査トンネル顕微鏡によって観察し,プラズマ照射によって生成した気孔の面密度,平均断面積,および深さが1〜2層のものの割合を求めた.プラズマ出力の増加とともに,ナノスペースの濃度,平均断面積ともに増加するが,ほとんどは2層以内の深さに過ぎず,プラズマ効果が表面のみであることが明かとなった.照射初期には単原子欠陥が生成し,照射時間とともに,欠陥の大きさおよび深さはわずかしか増加しないが,数が急激に増加した.照射温度を室温から400℃に上げると欠陥の合体が加速され,その面積のみが増加した. 2)炭素被覆による金属・セラミックス材料の表面修飾:液相炭素化して難黒鉛化性炭素を与える,ポリビニルピロリドンおよびポリアクリロニトリル粉末をマグネタイト粉末とともに不活性雰囲気下で熱処理することにより,1150℃以上で,天然黒鉛に匹敵する結晶性を持つ黒鉛被覆鉄粒子を作成できることを明らかにした.塩酸処理によって鉄を除去すれば,非常に純度のよい黒鉛フレークを得ることができ,低温熱処理による黒鉛製造法としても有望な方法であると考えられる.
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