研究概要 |
本研究では,月・惑星表面上に送り込まれる無人探査ローバーが,石や砂で覆われた自然地形を踏破し,ミッションを達成するための走行力学と制御法を明らかにすることを目的としている.米国ではNASAの主導のもと,火星探査計画が進行している.一方,日本では,宇宙科学研究所およびNASDAとの共同により月面探査計画が進められている. 本研究では特に,(1)ローバーの走行シミュレーションを可能とするための力学的定式化,(2)6輪型ローバーテストベッドを用いた実験検証および実験データ解析に基づく走行力学モデルの確立および,(3)以上の知見を応用し,不整地環境における安定した走行制御法の検討,を重点的におこなった. まず,力学的定式化においては,The SpaceDynと名付けた汎用多体系ダイナミクスシミュレーション環境を開発・拡張し,ローバーの走行力学をシミュレートする環境を整えた.米国の火星探査計画で用いられている6輪型ローバーは,Rocker-Bogieシステムと呼ばれるリンク機構を用いた特殊なサスペンションを採用しているが,その不整地踏破の挙動を的確にシミュレーションすることができるようになった.次いで6輪型ローバーのテストベッドを開発し,砂地,岩れき地などの自然地形における走行性能を確認した.特に砂地では,登坂時などに走行抵抗が増大すると車輪のすべり率(の絶対値)が増大し,牽引力を失い,最終的には空転状態となる様子が観察された.計測結果に基づき,この際のすべり率-牽引力の関係を推定し,数値シミュレーションに用いることにより,観察された現象を再現することができた. 以上の解析結果をもとに,車輪の空転やスタックを生じにくい走行制御法を検討し,各軸への荷重の均等配分あるいは,荷重が均等でない場合には,トルクの傾斜配分を考慮した走行制御を行うことにより,走行性能が向上するを明らかにした.
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