研究代表者らは、人間のようにしなやかな機能を持つハードウェア、すなわち"フレックスウェア"と呼ばれる新概念の電子回路技術をベ一スにした知的電子システムを世界に先駆けて提唱してきた。本研究では、このシステムの具現化に要求される高精度、高性能半導体製造プロセス技術を、研究代表者らがこれまで世界を先導して開発してきたウルトラクリーン化技術をベースに開発した。まず、科学的な見地から半導体プロセスの問題点を徹底的に究明し、プロセス装置が満たさなければならない条件を明確にした。これをもとに、全く新しい2つのプラズマプロセス装置、すなわちプラズマCVD、酸化、窒化及びレジストアッシング用のラジアルラインスロットアンテナマイクロ波プラズマプロセス装置と、反応性イオンエッチング及びスパッタ成膜用の平衡電子ドリフトマグネトロンプラズマプロセス装置を独自に考案し、開発を行った。本研究で開発したマイクロ波プラズマ励起技術は、高密度で非常に電子温度が低い理想的なプラズマを大口径基板上に均一に生成することができる画期的な技術である。このプラズマ励起技術とウルトラクリーン化技術を導入したプロセス装置を用いて、シリコン表面の酸化や窒化を行う技術を開発した。その結果、基板温度400℃という低温で基板温度1000℃の熱酸化膜より優れた特性のゲート酸化膜を形成することに成功した。さらに、次世代の高性能デバイスに必須となる高誘電率ゲート窒化膜を、同様に基板温度400℃という低温で形成することに成功した。電気的特性においても他の技術を圧倒する高品質ゲート窒化膜が得られており、世界中から注目を集めている。これらの新技術により、全てのプロセスを500℃以下の低温で行うトータル低温化プロセスが初めて可能となり、新構造新材料を多用した超高性能デバイスが核となる知的電子システム実現への道が開かれた。
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