研究概要 |
本研究の目的は,細管電気泳動システムにおける化学システム,゛微量金属イオンと結合する配位子とそれによって生成した錯体と相互作用する物質の組み合わぜをCE流動反応場に持ち込むことによって,それぞれ単独では発揮し得ないであろう超精密分離機能とフェムトモルに達する超高感度性を創出しようとするところにある. 本年度は昨年度の研究の続行とともに,主にキレート配位子システムの設計・探索・合成を行った. 1.ポリアミノカルボン酸類,ethylenediaminetetraacetate(EDTA)およびcyclohexane-1,2-diamine-tetraacetate(CyDTA),並びにフェノール基を持つポリアミノカルボン酸 N,N-Bis(hydroxybenzyl)-ethylenediamine-N,N-diacetate(HBED)の金属イオンCE分離特性を調べた.泳動マトリックス(高分子電解質;塩化ポリアリールアンモニウムなど)の選択によるCEピーク分離能の向上に成功した.また,HBEDがTbイオンに対する極めて優れたエネルギー移動発光配位子となることを発見した. 2.項目1に挙げたHBEDのフェノール基の塩基性制御を目的に臭素化誘導体の合成を行い,その錯形成挙動を検討した.本試薬は光吸収・発光機能をもち,鉄およびランタノイドイオンの分離定量を目指して設計されたものである. 3.多座ポリアミノカルボン酸配位子としてphenylenediamine-N,N,N',N'-tetracarboxylate(PDTA)を見出し,そのCa錯体のCE分離に成功した.本錯体の生成反応及び解離反応の平衡と速度に関して現在検討中である.
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