細線を円筒状に並べて高速放電を行い、以前より安定な中心収束高速ピンチを発生して高エネルギーX線を発生し、これを慣性核融合関連研究へ応用することが、最近はやりの研究トピックスになっている。これにたいして、軽イオンビーム慣性核融合研究の場合には、自身の高密度電荷にさからう形でビーム収束度を今まで以上に上げる必要があり、他方、重イオンビーム慣性核融合研究の場合には、今までよりも2-3桁高い電流値のビームを発生する必要がある。そこで本研究では、細線列高速ピンチによる慣性核融合に関する重要研究項目を調査し、新たに着手できる研究課題の検討をすると同時に、軽でもなく重でもない、これら両者の中間領域の重さのビーム種を用いる慣性核融合関連研究を実施し、従来の軽いビームと重いビームが内包する致命的課題の解決を計画した。 東工大のイオン・ダイオードとサンディア研究所のイオン・ダイオードおよびX線発生装置の最新研究結果を参考にして、研究を進めた。窒素の1価イオンを主成分とするビームの、イオン・ダイオード陽極面上における、イオンビームのミクロ発散角の測定結果をさらに検討し、以前の陽子ビームの結果と比較した。また、同様の実験をサンディア研究所のRHEPP-1装置で実施するため、現有のイオン・ダイオードの改造を試みた。さらに、現有のイオンビームによる低温状態の標的を含む各種標的照射実験も試み、イオンビームによる各種の薄膜生成の可能性を調べた。これらと平行して、慣性核融合反応に伴う強力X線による核融合炉壁の蒸発量を見積もるために、高温高密度プラズマからの放射やX線による炭素材料のアブレーションの数値計算を行った。以上のほかに、レーザー励起の陽極プラズマ生成法に使えるVUVレーザーの動作シミュレーションと、現有紫外線レーザーによるプラズマ生成実験も試み、基礎データを集積した。
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