研究概要 |
昨年まではアニオン性ポリマーに分散したCdS超微粒子を用いていたが、微粒子表面の欠陥などの効果がかなり大きく、発光スペクトルにもエキシトン発光に加えて、欠陥発光が強く見られた。そこで本年度は主に、水溶液中で微粒子形成後に過剰のカドミウムイオン添加とph調節により、表面欠陥の効果を最小限に抑えてエキシトン発光を著しく増強したいわゆる蛍光活性化CdS超微粒子のフェムト秒レーザーによる超高速応答を検討した。バルクCdS半導体のバドギャップ(510nm)より、短波長側に吸収をもち量子サイズ効果を示す三種のCdS超微粒子を形成した。それぞれの直径は、エキシトン吸収波長から3.7,4.4,5.7nmと評価された。それらは、それぞれ、458,477,504nmにピークをもつ強いエキシトン発光を示した。最小のものでは欠陥発光もまだ観測されたが、他の二つはほとんどがエキシトン発光であった。400nmのフェムト秒レーザーで励起すると、1ピコ秒以内に420-520nm域のエキシトン吸収がブリーチした。ブリーチングの回復は、数ピコ秒の寿命のものが主成分であり、CdS超微粒子としては初めてさらに短いサブピコ秒の成分も観測された。これらの結果から、表面欠陥が大幅に減少した蛍光活性化CdS超微粒子では、光励起で生成した電子と正孔が直接再結合する超高速過程がドミナントになったと結論された。このような成果は、半導体による超高速光応答材料の開発に大きく資するものである。
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