研究概要 |
ソフトな水溶液を使って,スクラップから貴金属,特に金を回収・再生をするための基礎研究を行った。チオ尿素,チオ硫酸,亜硫酸を複合添加したアルカリ性水溶液中で定電位電解すると,金は溶解するが他の卑な金属である鉄,アルミニウム,銅などは溶解しにくいことが判明した。これにより,物理的に混合しているスクラップから金を選択的に溶解回収できることが明らかとなった。電気化学的な水晶振動子微量質量計を用いた実験から金を選択的に溶解させる最適な溶液条件を検討した。その結果,溶液は,pH11〜13,電極電位は0.5V,添加剤は0.1〜1mol/Lの範囲内に,金の溶解速度が速い条件があることを見出した。チオ尿素とチオ硫酸は金との錯体形成剤となり,亜硫酸はチオ硫酸の自然酸化による分解を抑制する効果があることがわかった。 また,酸性溶液による,廃棄バッテリーからのコバルト合金の回収や廃棄金属からのタングステン等の湿式回収について検討し,コバルトが浸出される溶液条件を見出し,中国におけるプラント立ち上げの基礎となった。さらに,鉄酸化細菌の成長を水晶振動子微量質量計を用いて計算する技術を示した。 以上のように,環境負荷の少ないソフト水溶液プロセスによる貴金属や非鉄金属人工資源からの再生プロセスについて,中国との共同研究により研究成果を出すことができたことと,非鉄金属の精錬関連の技術や研究について,共同研究による人的交流の場を設けることによりお互いに議論することができたことが成果といえる。
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