研究概要 |
本年度に上げられた成果はつぎの通りである. 1. 日側は,蒸気・凝縮を伴なう2重円管のクエット流の分岐をさらに詳しく研究した.これまでは内部の円管だけが回転している場合を対象にして分岐解を解析・数値解析の両面から検討してきたが,本年度は,円管の回転速度が遅い弱希薄気体に対象を限定し,2つの円管が共に回転する場合も含めて気体の振舞いを解析的に調べた.その結果,この場合における分岐の構造の全容が明らかになり,これまでの研究で対象にしていた分岐解に加えて,さらに多様な新しい型の分岐解を見出した. 2. 希薄気体には温度場によって流れが誘起されるという,常圧気体にはない性質がある.日側は,この性質を巧みに利用した真空ポンプの可能性について実験による検討を行った.その結果,既に行われた数値解析の結果と整合する気体の流れが観測され,新しい真空ポンプの実現性が確認された.また,この実験的検証も含め,温度場による希薄気体の流れについての従来の成果を総括し,その情報を系統化した. 3. 日伊で共同,あるいは分担して,衝撃波問題についてつぎの2つの研究を行った. (1) 伊側からの研究成果の提供により前年度から無限に強い衝撃波の構造の共同研究が開始された.日側の直接的数値解析法をこの問題に適用することにより,伊側の研究では得られなかった速度分布関数の特異性の構造が明らかにされた. (2)日側は時間依存のボルツマン方程式の直接的および確率論的数値解法を時間発展について高次精度化し,それを衝撃波の伝播および反射の問題に適用した.さらに,ボルツマン方程式を含むより広い範囲の微(積)分方程式の初期値問題に対する高次精度数値解法としてこれを一般化した.
|