本研究はネットワーク上に分散した多様な情報資源を統合して利用するための分散協調作業環境の実現を目標とし、分散した異種マルチメディア情報の協調的な相互運用とオブジェクト指向モデルの拡張による協調型情報システムのモデル化を具体的なテーマとした。 初年度では仮想オフィスを応用例とした動的環境更新メカニズムの設計を行った。協調型システムにおけるトランザクションは従来のトランザクションに比べ細密さと柔軟性が要求される。これを実現する新しい手法を開発した。また、データウェアハウスに関する技術動向の調査、コミュニティに対する今後の研究方針に関する提言、ビュー更新処理問題において従来解法を効率で上回る手法の開発、ハイパーメディアシステムにおける動作履歴ビュー機能の設計と実装を行った。 平成11年度は遠隔教育や仮想オフィス等の応用システムを構築するための基盤となるマルチメディア協調処理システムの開発を進め、さらに利用実験を行うことにより利用者からのフィードバックを得た。また、利用者ごとのパーソナライゼーションを考慮したマルチメディアデータベースの相互運用方式の拡張を行った。さらにオブジェクト指向データベースのビュー機能の拡張によるマルチメディナ情報システムのモデルに関する研究を進め、その成果を協調型ハイパーメディアシステムのアーキテクチャに反映させた。このほか、協調型システムにおけるデータウェアハウスの利用、協調処理の効率化および正当性の保証のための並行処理に関する研究も進めた。 平成12年はこれまでの協調型情報システムに関する研究成果を統合することにより、実用的な協調型システムの開発の基礎技術としてのとりまとめと、いくつかの具体的なシステムの設計・開発・実装・評価等を行った。まず協調型ハイパーメディアシステムにおける作業状態の遷移の管理を行うためのメカニズムの設計と実装および評価を行った。これによって高度な協調作業を行う場合の問題点とされる作業管理者の操作負担を軽減し、作業状態が複雑になった場合もシステムで支援することが可能であることが分かった。また、教育支援システムに動作ビュー機構を統合し実際に利用することによって、実際の応用の場面においても動作ビュー機構が有効に利用できることが分かった。さらに、WWWにおけるキャッシングの効率を上げるための研究を進めたほか、WWW上に従来のデータウェアハウスの手法を統合することによりウェブウェアハウスという概念を提唱し、より高度なWWWの利用方法の提案を行った。
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