研究概要 |
当初案に近い形で本研究を実施し,九州大学からは2名を英国に派遣し,リース大学・ブラットフォード大学からは別予算で2名が来日した.訪英と訪日の機会を活かすために,9月には,リーズで開催された第26回トライボロジーに関するリーズーリヨンシンポジウムにおいて,村上が次世代人工関節用の人工軟骨の潤滑特性に関する共同研究成果を発表し,リーズ大学において研究協議を行った.11月には,英国から2名が来日し九州大学で研究協議を行った.その後,京都で開催された第25回日本臨床バイオメカニクス学会において村上・フィッシャー教授がオーガナイザとして国際シンポジウム「関節の潤滑機構」を進行し,両国の4名が参加し,研究成果を発表するとともに国内他機関のシンポジストとともに討議を行い,今後の研究展望を明らかにした.なお,4月ロンドンで開催された人工膝関節に関する国際会議ではジン博士が共同研究について発表した. まず,ポリエチレンを用いた人工関節の形状設計と潤滑膜形成の関係を評価するとともに,摩耗挙動を評価した.また,摩耗粉に対する細胞の応答と骨融解の関連を検討した.とくに,実験室レベルでの摩耗評価に関して,多様な運動を反映した多方向滑り試験では,一方向試験よりも摩耗が多くなり,臨床例に近くなることを指摘した.また,関節液に近い性状を有する血清の使用が,臨床上の摩耗挙動に対応することを示した.メタル・メタル人工股関節では,磁場印加による摩耗低減を実証し,多方向滑り実験では,なじみ効果による摩耗低下を提示した.セラミック同士については,アルミナセラミックスの結晶構造・機械的特性の影響や異種材組合せの優位性を評価した.人工軟骨を有する人工関節に関しては,ハイドロゲル人工軟骨の物性と歩行条件下における潤滑特性の関連を実験的に評価した.以上の成果を統括し,次世代人工関節の設計指針を提示した.
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