より高度化される人工臓器の開発研究において、血液接触面に対する最適な材料の選択方法、最適な設計方法、最適な製造方法を確立することが、本調査研究の目的である。その目標達成のために、血流挙動解析を行う同一の対象モデルをまず設定する。それに対して、研究を組織する3人のメンバーが血液循環実験、流れの可視化実験、流体挙動の数値解析を行い、それぞれのデータの比較検討を行った。 初年度はまず共同研究先である、米国ピッツバーグ大学おいてジム・アンターキー(Jim Antaki)助教授のバイオエンジニアリンググループとのミーティングを行い、そこで各施設の過去の実験と研究の成果を発表しあい、情報交換を行った。また、必要と思われる動物実験もその時に行い、エネルギーの散逸に基づく血液破壊を定量化する新たな数式モデルの提唱の可能性について、基礎的な検討を行った。そして初年度の終了時に共同研究者であるジム・アンターキー助教授を米国から招待し、早大におけるミーティングを開催した。そこでこの一年のそれぞれの成果を持ち寄り、数式モデルの妥当性の検討を行うとともに、明年度の役割分担を明確化した。最終年度(2年目)は、米国ピッツバーグ大学において再びミーティング・実験を行った。そこでは2年目のお互いの研究成果について説明した後、両者の合意した方法で新しい溶血実験を行った。その方法とは新鮮な牛の血液をまず遠心分離して血しょうを除く、そして、血しょうのかわりに生理食塩水と高分子デキストアンという糖度の異なる物質で置換する、その2種の液体で血球の破壊状態を調べる、という方法である。これによって得られたデータは再現性が高いものであり、また解析結果ともよく合致することを見出した。
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