哺乳類の四肢の再生能を制御する機構に関する研究

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10044191
• 研究種目: 国際学術研究
• 応募区分: 共同研究
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 井出 宏之 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70022704)
• 研究分担者: 横山 仁 東北大学, 大学院・理学研究科, D1学振研究員 ; 遠藤 哲也 東北大学, 大学院・理学研究科, D3学振研究員 ; MUNEOKA Ken Tulane大学, 生物学科, 教授
• キーワード: マウス四肢再生 / 肢芽再生 / FGF / sonic hedgehog発現

研究概要

1. イモリ、サンショウウオなどの有尾両生類は、成体になっても四肢の再生能を持ち、切断後、完全な四肢を再生する。無尾両生類は変態以前にのみ四肢再生能を持ち、成体の四肢を切断すると、再生を全くしないか、一本の軟骨突起、スパイクを形成するのみである。鳥類の四肢は全く再生しない。哺乳類は、指先のみを再生する。
2. この様な綱特異的な四肢再生能を基本に、哺乳類の四肢再生能を制御する因子を明らかにし、再生能を拡大させるために、マウスの肢芽での解析を行った。マウスやニワトリの肢芽でAER因子のひとつとされ、ツメガエル再生芽でも発現が明らかになった繊維芽細胞成長因子(FGF)を、器官培養したマウス肢芽および、マウス母体内の胚の肢芽に投与し、培養した肢芽で、指の軟骨の増殖、分岐を明らかにした。現在さまざまなFGFの投与を続けつつある。またFGFは転写因子Msx-1遺伝子の発現を促進し、再生機構を開始すると考えられるので、Msx-1遺伝子の発現をin situ hybridizationで調べている。
3. 哺乳類四肢の再生能に近く、中間的な段階にある無尾両生類の四肢再生能の分子機構を調べた。その結果、FGFだけでなく、Sonic hedgehog(Shh)遺伝子の発現も四肢の再生を制御していることが分かったので、Shh遺伝子を強制発現させた細胞のマウス肢芽への投与により、再生の促進の可能性を調べている。

研究成果

• [文献書誌] Yonei-Tamura,S.: "FGF7 and FGF10 induce apical ectoderm directly in the lateral and medium ectoderm of chick embryo." Developmental Biology. (印刷中). (1999)
• [文献書誌] Wada,N.: "Glycosylphosphatidylinositol-anchored cell surface proteins regulate position-specific cell affinity in the limb bud." Developmental Biology. 202. 244-252 (1998)
• [文献書誌] Koshiba,K.: "Expression of Msx genes in regenerating and developing limbs of axolotl." Journal of Experimnta.Zoology. 282. 703-714 (1998)
• [文献書誌] Ide,H.: "Pattern formation in dissociated limb bud mesenchyme in vitro and in vivo." Wound,Repair & Regeneration. 6. 398-402 (1998)
• [文献書誌] Yamamoto,M.: "Coorinated expression of Hoxa-11 and Hoxa-13 during limb muscle patterning." Development. 125. 1325-1335 (1998)
• [文献書誌] Hara,K.et al: "Effects of FGFs on the morphogenic potency and AER-maintenance activity of cultured progress zone cells of chick limb bud" International Journal of Developmental Biology. 42. 591-599 (1998)
• [文献書誌] Yokoyama,H.: "Multiple digit formation in Xenopus limb recombinan" Developmental Biology. 196. 1-10 (1998)
• [文献書誌] Sato-Maeda,M.: "Juxtaposition of two heterotypic monolayer cell cultures of chick limb bud." Development Growth & Differentiation. 40. 403-412 (1998)