四肢の再生を制御している因子として、シグナル分子、それに反応する能力を持った細胞が考えられる。 ツメガエルの肢芽は発生とともに再生能を失うので、再生能解析のために好適な材料である。この材料を用いて、肢芽の再生能は表皮ではなく、間充織に支配されていること、特に、間充織で繊維芽細胞成長因子-10(FGF-10)遺伝子が発現していることが重要であることを明らかにした。さらに発生が進んでほとんど再生能を失った幼生の肢芽を切断して、FGF-10を含むヘパリンビーズを切り口に挿入すると、切断面の表皮でFGF-8遺伝子の発現が誘導され、挿入しなかったものに比べ、指の数が増加し、パターンについても再生と考えられる現象が見られた。 そこで胚および新生仔で指の先端にのみ再生能が残っているマウス肢芽と四肢について、FGFの添加、肢芽細胞の添加を行い、再生能の上昇が見られるか否かを調べた。FGFはシグナル分子として最も有望なものであり、肢芽細胞の添加は、将来、肢芽幹細胞を加えて再生能を持たせる実験のモデルとして大切なものと考えられる。 13.5日胚の肢芽を手首の部分から切り、さらに指の第1関節から先を切除して器官培養を行った。指の断面にFGFを含むビーズを挿入したところ、FGF-8以外の全てのFGFでビーズを取り囲むように細胞増殖が起こり、軟骨化部域も増加した。しかし独立した指骨の形成には到らなかった。これは切断面が露出しており、表皮由来のapical epidermisが形成されていないことがひとつの原因と考えられる。 胚に直接FGFを加えた場合は、FGF-4によって肢芽後部にある第4指で指骨の分岐が起こった。 新生仔マウスの指骨の先端部を切断し、FGF-10および、胚の肢芽の間充織を加えた場合は、対照との間に差は見られなかった。FGF-10の作用が短期的であるために効かない可能性があるため、エレクトロポレーション等の方法を用いたFGF-10遺伝子の導入による再生能の上昇について現在、解析中である。
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