研究概要 |
細胞性粘菌を発生系をモデル実験系として用い,1)細胞周期上の増殖/分化のチェックポイント(PS点)からの分化に伴い,一過的に発現する新奇遺伝子(dia1)は分化の進行にむしろブレーキをかけて,細胞間での分化程度の差をある程度縮める役割を担うこと(Hirose et al.,2000),2)グルコース調節タンパク質94をコードする遺伝子(Dd-grp94)の発現が飢餓に伴って急速に減少し,この遺伝子を過剰発現させると細胞集合をはじめとする分化の進行が遅れるばかりでなく,集団内での予定胞子細胞の分化が特に抑制されること(Morita et al.,2000),3)ある特定な条件下(二次元細胞集団培養系)では,明瞭な外層(暗層)・内層(明層)のパターンが急速に形成され,外層では主として酸化的リン酸化によるATP生産を伴う呼吸が,内層ではシアン耐性呼吸が行われていること,そして,この際,細胞の分化は外層でのみ位置依存的に起こり,内層ではいったん分化した細胞も急速に脱分化すること(Hirano et al.,2000),などを明らかにした.また,上の3)に関連して,4)実験的に制御可能な境界条件を有する二次元細胞集団培養系において,チューリング・タイプのパターン形成(自発的な対称性破壊)が認められるのを生命システムで実証することにはじめて成功した(Sawai,Maeda & Sawada,2000).また,須藤は,粘菌細胞が増殖から分化に移行する際に新規遺伝子amiBの発現が必要とされることを明らかにした(Kon et al.,2000).
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