研究概要 |
(1)ニワトリZ染色体上のDMRT1遺伝子に関する研究 研究協力者のM.Schmid教授,I.Nanda博士(ドイツ、ヴェルツブルグ大学)はこれまでにクローニングされているニワトリのZ染色体(雌雄共通の性染色体)上の遺伝子の多くが、ヒトでは9番染色体(常染色体)に存在することに注目した。特にDMRT1遺伝子は、その変異によりヒトではXY性染色体構成を持ちながら表現型が女性化することで、雄性の分化に関与することが推定されており、そのホモログがニワトリではZ染色体上にあることから、ニワトリでも雄性分化に関与するのではないかと推定されている[Nature Genet.21: 258-259(1999)]。 我々はニワトリZ染色体上のDMRT1遺伝子のごく近傍にMHM領域と名づけたBamHI2.2kb配列が反復した部位を見いだし、この配列が雌の1本のZ染色体上では低メチル化修飾で、活発に転写され、転写されたRNAが核内の転写部位近傍のDMRT1遺伝子部位に接するように集積すること、雄の2本のZ染色体上では共に高メチル化修飾を受け、転写されないことを見いだした。このMHM-RNAの集積が雌でのDMRT1遺伝子の転写抑制に関与するのではないかと考え、このモデルを検証するべく実験を進めている。 (2)ニワトリW染色体上のWpkci遺伝子の発見と機能解析 雌の5日胚のcDNAライブラリーから、雌胚特異的に発現するクローンを単離し、その塩基配列がPKCI(protein kinase C interacting protein)遺伝子のものと類似していることからWpkciと名づけた。WpkciはW染色体の非ヘテロクロマチン末端部に位置すること、ニワトリのPKCI遺伝子はZ染色体の長腕セントロメア近くに位置することが、蛍光in situハイブリダイゼーションにより示された。GFP-融合タンパク質としてWpkciをニワトリ胚由来の繊維芽細胞で発現させると核に局在した。雌胚中ではWpkciとPKCIがヘテロダイマーを形成して、PKCI機能を妨げることにより、雌の性分化の引き金が引かれるのではないかと考え、それを実証すべく研究を進めている。
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