研究課題/領域番号 |
10044196
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
渡辺 公綱 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (00134502)
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研究分担者 |
鈴木 勉 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 講師 (20292782)
上田 卓世 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (80184927)
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キーワード | タンパク質生合成 / リボソーム / リボソームタンパク質 / リボソームRNA / ミトコンドリア / LC / MS / RNA・タンパク間の役割委譲 / tRNA |
研究概要 |
真核生物の細胞内小器官であるミトコンドリアはATP生産を司る重要な器官で、独自の遺伝子とその発現系を持っている。それは好気性細菌が真核細胞の祖先に共生して生じたものと考えられており、実際抗生物質に対する感受性などから、その翻訳系は大腸菌のものに近いと考えられる。そのリボソームは大腸菌のものに比べて、サイズや分量はほぼ等しいのに対し、沈降係数は55Sとかなり小さく、RNAが縮小している代わりにタンパク質が増加していることが指摘されていた。我々は、ミトコンドリア・リボソームの構成成分を大腸菌のものと比較しながら詳細に調べることにより、リボソームとリボソームRNAの機能構造を解明することを試みた。まず翻訳活性に関しては、ミトコンドリアのリボソームは大腸菌のtRNAおよび翻訳因子をも受け入れるのに対し、大腸菌のリボソームはミトコンドリアのtRNAおよび翻訳因子との組み合わせでは翻訳活性を発現しなかった。そこでこの違いを検討するために、そのキャラクタリゼーションは殆ど行われていなかったミトコンドリアのリボソームタンパク質を、牛ミトコンドリアの55Sリボソームから単離し、液体クロマトグラフ/質量分析表(LC/MS)によって解析した。現在まで約40種類のミトコンドリアのリボソームタンパク質を同定し、大腸菌のタンパク質とホモロジーのあるものは、その遺伝子の同定もヒトゲノムのデータベース解析から可能となった。そこで明らかになったことは、タンパク質結合部位が保存されているRNAに対応するリボソームタンパク質(L2など)の大きさは大腸菌とミトコンドリアでほぼ変わらないのに対し、タンパク質との結合部位が短縮、あるいは欠落しているRNAに対応するタンパク質(L1,L3など)は大きくなっているという傾向があることである。このことは、進化の過程でRNAが主体であった翻訳装置のかなりの部分がタンパク質へとその役割が委譲されたのではないかという可能性を伺わせる。
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