研究概要 |
γ-HCH分解菌Sphingomonas paucimobilis UT26由来のLinB(1,4-TCDN hydrolase)は,加水分解的脱ハロゲン反応を触媒するhaloalkane dehalogenaseの一員であるが,基質特異性が既知のものと異なり,その反応機構に興味が持たれた。LinBは他のhaloalkane dehalogenaseと同様にα/β-hydrolase familyに属することから,nucleophile-histidine-acidから成るcatalytic triadが活性に必須であると考えられる。そこで,コンピューターを用いたホモロジーモデリングからcatalytic triadを構成するアミノ酸残基予想し,これらを置換した変異酵素を作製した。大腸菌で変異酵素を大量発現し,精製後にそれらの活性を検討した結果,LinBにおいてはD108,H272,E132がcatalytic triadであることが確認された。また,反応機構および基質特異性決定因子について更に詳細な解析を行うためにC末端に6xHisを導入した酵素を作製し,本酵素がNi-NTAによりone-step精製が可能であり,wild type酵素と同様の活性特性を持つことを確認した。 更に大腸菌中で大量発現したLinBの結晶化,及びX線による構造解析の決定に成功した。その結果,LinBは,既知のハロアルカンデハロゲナーゼと比較して,特徴的な活性中心ポケット及び酵素の表層からそこへ至る通路の構造をしていることが明らかになった。 以上,ハロアルカンデハロゲナーゼLinBの詳細な反応機構の解明・基質特異性の改変への基礎を築いた。
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