海水中にウイルス様粒子が広く分布することが知られている。しかし、これらの粒子が細菌群厚をどの程度量的にコントロールしているか、あるいは遺伝子伝搬にどの程度寄与しているかについては不明な点が多い。 本研究ではまず地中海のカリビおよび日本近海にて得られた海見ずから限外ろ過によってウイルス様粒子を濃縮した。定量的観察から、天然海水中には約10^6/ml程度のウイルス様粒子が分布することが明らかになった。また、海洋細菌の純粋培養株からもウイルス様粒子が放出されることが電子顕微鏡観察により明らかになった。これらの粒子は一般的に大きさ数10nmの球形で、DNAを含むが、プラークを形成せず、一般的なウイルスとは異なることが明らかになった。しかし、E.coliAB1157の菌数を有為に減少させることから、一定の静菌あるいは殺菌作用があることがわかった。これらのウイルス様粒子の遺伝子伝搬の能力を調べるため、E.coliAB1157の栄養要求変異株に対する形質導入実験を行った。その結果、1ウイルス様粒子あたり、約10^<-3>cfuの頻度で栄養要求性を解消することがわかった。 以上の結果より、様々な海洋細菌から、かなり一般的な現象として増殖終期にウイルス様粒子が放出されること、これらの粒子は核酸を含んで殺菌、遺伝子伝搬能力を持つものの、従来のウイルスの性質からは説明できないことがわかった。また 、同様の粒子が天然海水中に存在することから、これらの粒子は天然に実際に存在し、細菌群集のコントロールや遺伝子伝搬に何らかの役割を果たしているものと推察される。
|