研究概要 |
本年度は以下の結果を得た。 1.日本側:オオムギの低温・光誘導性クローンcor14、ABA誘導性クローンHva1、穀類特異的低温誘導性クローンpAo86をプローブとして、低温・凍結耐性の冬コムギ品種'Mironovsak808'から低温馴化後に作成したcDNAライブラリーを用いてWcor14、Wcor14-13,Wrab1,2,Wlt10を単離し、構造決定と発現解析をした。Wcor14は、N末に葉緑体輸送シグナルを持つ14kDのペプチトWCOR14をコードする遺伝子で発現は低温特異的であること、転写産物の種類とイントロンの有無と長さから少なくとも4コピーのWcor14ゲノム配列があることを明らかにした。Wcor14に相同なWcor14-13は、WCOR14と13kDのDHNタンパク質の2つをコードする2シストロン性の遺伝子である可能性を示唆する結果を得た。これらについて、大腸菌でタンパク質を発現させた。Wrab1はLEAグループIIIに属する多重遺伝子で低温とともにABA誘導性であること,Wrab2はGA_3によっても発現誘導を受けるdhn遺伝子であること、wlt10は穀類に特異的な低温誘導性遺伝子blt,rltの相同配列であることを明らかにした。シアン耐性鎖酸化酵素遺伝子Waoxについては、RACE PCRで全構造を決定し、プロモーターを含むゲノム配列を得る目的で'Mironovska 808'のゲノムライブラリーを作成した。'Mironovska 808'x CSの交配から、今春F_5種子を得る予定である。次年度の研究計画を討議するため、研究代表者がブルガリアを訪問した(12年3月)。 2.ブルガリア側:ブルガリア側から1名が来日し(11年10月-12年3月)、神戸大学でコムギ低温誘導性遺伝子Wcor14,Wcor14-13を組み込んだ形質転換用プラズミドを構築し、ボンバードメント法でオオムギ種子由来カルスに導入した。
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