研究概要 |
1.日本側(神戸大学) 凍結・低温耐性の冬コムギ品種'Mironovska808(M808)'から以下の6種の低温応答遺伝子を得て、その構造と機能を解析した。1)オオムギの低温・光応答遺伝子Bcor14に相同なWcor14。N末コード部分がWcor14と相同なWcs19。WCOR14とWCS19はともにN末端51残基の葉緑体輸送シグナルを持っていた。2)dehydrinファミリーに属するWdhn13。3)オオムギのGA_3応答性ES2Aに相同なWrab17。4)グループ3-Leaファミリーに属するWrab19。5)穀類に特異的なLtrファミリーに属するWltr10。6)シアン耐性鎖酸化酵素AOXをコードする遺伝子Waox1,Waox2。各遺伝子について染色体置換系を用いたゲノミックサザン分析で座乗染色体を決定した。M808と春コムギ品種'Chinese Spring'を用いて凍結耐性(-20℃)を行い、低温順化による凍結耐性の増強と品種間差を明らかにした。各遺伝子の発現をノーザン分析で解析し、Wcor14,Wca19,Wltr10の発現が低温特異的であること、Wrab17,Wrab19は低温とともにABA/GA_3による発現調節を受けることを明らかにした。Waox1,Waox2はともに低温で転写産物量が増加し、Waox2ではKCNによる転写産物量の増加が見られた。各遺伝子の発現レベルと上記2品種の凍結耐性レベルに正の相関を認めた。GFP融合遺伝子の一過性発現を利用して、WCOR14,WCS19が葉緑体に、WAOX1,WAOX2がミトコンドリアに輸送されることを明らかにした。Waox1,Waox2についてPCRによりゲノミッククローンを単離し、エキソン・イントロン構造を明らかにした。 ブルガリアから2名の招聘研究員を迎え、低温応答遺伝子について研修を行った。 2.ブルガリア側(遺伝子工学研究所) 1)各種の4倍性・6倍性コムギを対象に凍結耐性試験を行い、品種間の遺伝的差異を明らかにした。2)コムギ低温応答遺伝子を導入したタバコ形質転換体を育成し、低温耐性を評価した。3)低温順化および凍結・融解過程における細胞・組織内の変化を近赤外(NIR)分光法で解析した。
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