研究概要 |
エジプトの牛と水牛の胚移植に関する研究では牛3頭、水牛4頭について発情後プロジェステロン製剤CIDRを膣内に挿入し、その1週間後にGnRHを投与し、更にその3日後にFSHを投与して過剰排卵処置を行った。過剰排卵はFSHの20mgを減量しながら3日間減量投与し、最終日にプロスタグランデイン投与後CIDRを膣内から除去した。その後43時間後に現れた発情で人工授精し、その7日後に胚回収を行った。また、これらの牛、水牛について胚回収後キトサンの30mg/mlの50mlを子宮内へ注入して発情を誘起し、排卵を確認後前述と同様な処置で連続過剰排卵処置した。その結果一回目の過剰排卵処置では牛と水牛別に回収卵数がそれぞれ7.3,2.3個、移植可能胚数がそれぞれ6個と1.8個、二回目の過剰排卵処置では、この割合が3.7,1.5個と0.5個の割合となった。初回における過剰排卵処置成績は日本での牛の正常胚回収率とほぼ同等であったが、水牛では平均1.8個となり極めて低い値であった。また2回目の過剰排卵処置では回収胚数と移植可能胚数共顕著に減少する傾向が伺われた。 体外受精に関する研究では開発した陰圧式炭酸ガス培養器を用いて、水牛と牛卵子を対象に体外受精を行った。水牛精子別に体外受精を行った実験では水牛雄 A,B,C別に、分割率がそれぞれ52%、81%と16%となり、各間に有意差がみられた。また、胚盤胞への発育率は水牛雄Bで40.2%となり、Aの13.5%とCの0%に比べて有意に高い成績であった。一方、牛卵母細胞を用いて体外成熟、受精、発生培養の全行程をCR1aaとCR2aa液で行い、培養液内へのソマトトロピンの添加の有効性を調べた。その結果CR1aa液ではソマトトロピンの200μg/mlで良好な成績が得られたが、CR2aa液ではソマトトロピンを添加しないか、添加量の低い50μg/mlで良好な成績が得られた。このようにCR1aaではソマトトロピンが卵母細胞の核の成熟を促したことが明らかにできたが、CR2aaではソマトトロピンの有効性がみられなかった。このように水牛と牛卵子の体外成熟、受精、発生の全行程をCR1aaまたはCR2aa液で行い、簡易炭酸ガス培養器の陰圧気相条件下において40%を超える高い割合で胚盤胞胚が得られた。
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