ミキソバクテリアはグラム陰性細菌でありながら、真核生物である細胞性粘菌と類似の形態形成を行う。栄養増殖期には一般の細菌と同様に、二分裂の形で増殖するが、栄養を制限した寒天培地では、形態形成過程にはいる。細胞はグライディングにより集合し、マウンドを形成する。個々の細胞は胞子に変換し、成熟胞子よりなるマウンドは子実体と呼ばれる。Myxococcus xanthusは、形態形成過程で細胞間の情報交換が頻繁に起り、細菌で形態形成を解析できるユニークな系である。fruA遺伝子は形態形成の初期に必須な分子質量25kDaの推定転写因子をコードする。fruAプロモーター近傍に結合する抑制因子Xの存在をゲルシフト法で確認し、その認識配列を推定した。またfruA欠失株で発現の著しく抑えられるタンパクP15の構造を質量分析法で解析した。fruB遺伝子の上流に存在するORF134に挿入変異を導入し、ORF134欠損では形態形成が著しく遅れることを明らかにした。ORF134-fruBはオペロンとしてともに形態形成に関与する。このオペロンは2個のプロモーターを持ち、栄養増殖期は1個だけが発言しているが、形態形成時には2個とも発現する。井上は、IonDは熱誘導遺伝子であり、その発現には大腸菌rpoHのホモログであるsigBCEには依存せず、rpoDホモログであるsigAと転写因子であるHsfAに依存することを明らかにした。HsfAは二成分制御系のレシーバードメインをもち、HsfBキナーゼによりリン酸化を受ける。リン酸化HsfAはIonDプロモーター上流に結合し、転写を活性化する。M.xanthusは多数のタンパクSer/Thrキナーゼを持つ。two hybrid法でこれらと相互作用する遺伝子を検索した。
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