研究分担者 |
持田 澄子 東京医科大学, 助教授 (30096341)
小崎 俊司 大阪府立大学, 農学部, 教授 (10109895)
高橋 正身 三菱化学生命科学研究所, プロジェクトセンター, プロジェクトセンター長
今泉 美佳 上智大学, 理工学部, 助手 (40201941)
笹川 展幸 上智大学, 理工学部, 助教授 (20187107)
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研究概要 |
本研究は、伝達物質放出の機構について、分泌小胞を開口部位に供給し係留する機構、ならびにCaシグナルに応答して直ちに小胞と形質膜の融合をもたらす機構を分子レベルで明らかにすることが目的である。本年度は、以下のように成果を得た。 1.シナプトタグミンとイノシトールポリリン酸による抑制的クランプ調節の検証を進めた結果、高透過性クロマフィン細胞ではCa刺激によってイノシトールポリリン酸が細胞質に遊離してくることが明らかとなり、それがシナプトタグミンC2ドメインに由来することが示唆された。イノシトールー6ーリン酸を細胞内マイクロインジェクションで投与すると、自発性の開口頻度ならびに脱分極刺激にたいする応答の開口頻度が顕著に抑制された。これに対して、イノシトールー6ー硫酸は、全く阻害作用を持たず、特異性が示された。また、In vitro実験系により、副賢髄質から調製した分泌顆粒の凝集に対してイノシトールポリリン酸が顕著な抑制を示すが、シナプトタグミンに結合活性を持たないイノシトールー3ーリン酸には、阻害作用は無かった。 2.我々はこれまでに,形質膜直下のF-アクチンならびにこれを介したアクチン一ミオシン相互作用が開口可能な分泌顆粒の持続的供給に重要であること、さらにCキナーゼの活性化はこの過程を増強させることを明らかにした。この調節に関わるCキナーゼの分子種とその機構、細胞骨格系との関連を解析するために、Cキナーゼの受容体蛋白質RACK1の細胞内局在を免疫組織化学的に解析した。RACK1は細胞膜直下、核膜周辺部、細胞質に局在しており、TPA刺激後も局在は変化しなかった。細胞膜直下に局在するRACK1はF-アクチンと同じ局在を示した。クロマフィン細胞にはPKCα,β(βI,βII,ε,ζがあり、静止時には細胞質に局在していた。TPA刺激を行うと、PKCα,βの移行が観察され、PKCαは細胞膜直下へ、PKCβはRACKIと同じ局在部位へ移行した。 F-アクチンの切断実験および免疫沈降実験から、クロマフィン細胞では活性化されたPKCα,βがRACK1を介してF-アクチンに結合する可能性が示唆され、PKCα,βのRACK1を介したF-アクチンへの結合がプライミング増強作用の分子機構に重要であることが推察された。 3.SNARE蛋白質の開口分泌における役割について、PC12細胞の低分泌能株を分離して、SNARE蛋白質の発現との関連を解析した結果、シンタキシン,VAMP-2、SNAP-25およびMunc-18の発現が有意に低いことが分泌能の低下に関わる可能性が明らかとなった。
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