研究課題/領域番号 |
10044217
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
檜枝 光太郎 立教大学, 理学部, 教授 (20062656)
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研究分担者 |
高倉 かほる 国際基督教大学, 教養学部, 助教授 (80052281)
小林 克巳 物質構造研究所, 放射光, 助教授 (20114077)
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キーワード | DNA / 主鎖切断 / 放射線 / 電子線 / 真空紫外線 / プラスミド / 低エネルギー |
研究概要 |
あらゆる放射線生物作用の初期過程は、低エネルギー電子線の作用に還元できる。しかし、低エネルギー電子線(10eVから数100eV)の照射実験は技術的に極度に困難であり、DNA分子に照射できる施設は、現在、英国グレイ研究所にしかない。一方、励起・電離等のエネルギー吸収モードを制御できる低エネルギー単色真空紫外線源として、高エネルギー加速器研究機構放射光実験施設(KEK・PF)のBL-20Aを利用した。本年度は、高倉(6-8月)および宇佐美(7-8月)がグレイ研究所に滞在し、プラスミドDNAに対する15から3000eVの低エネルギー電子線の照射実験を行った。また、檜枝、小林が7月下旬にグレイ研究所に滞在し、日本側および英国側研究者が全員集合して、得られた結果を包括的に検討した。結果をまとめると、(1)15eV電子線によって1本鎖および2本鎖切断が、線量に対してほぼ直線的に誘発された。このことは1本鎖および2本鎖切断誘発の闕値が15eV以下であることを示す。特に2本鎖切断誘発の闕値が15eV以下であることが実験的に示された成果は大きい。(2)低エネルギー電子線は2本鎖切断を1本鎖切断の数十分の1の比率で誘発し、この比がγ線による比と極端に違わないことが示された。(3)しかし、本年度は低エネルギー電子線照射装置の線量測定系に動作不良があり、その発見が遅れたために、昨年度の結果が再現できなかった期間が長く、十分な定量的なデータを得ることができなかった。(4)単色真空紫外線をプラスミド水溶液に照射するための照射方法を開発し、水溶液中DNAの2本鎖切断が8eV程度でも誘発されることを明きらかにすることができた。本研究によって、シュミレーション計算で用いるDNA主鎖切断誘発の闕値を決める際に参考にすべき重要な情報を得ることができた。
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