C-MYCの機能スイッチング機構の解明

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10044226
• 研究種目: 国際学術研究
• 応募区分: 共同研究
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 有賀 早苗 北海道大学, 医療技術短期大学部, 教授 (90184283)
• 研究分担者: 北浦 廣剛 北海道大学, 大学院・薬学研究科, 助手 (10281817) ; 有賀 寛芳 北海道大学, 大学院・薬学研究科, 教授 (20143505) ; GALLI Ivo ベルン大学病院, 研究員 ; RUSCONI Sand フリブール大学, 教授 ; WANG Teresa スタンフォード大学, 医学センター, 教授
• キーワード: C-MYC / AMY-1 / MM-1 / MSSP / 転写調節 / トランスフォーメイション / 精子形成 / 癌抑制遺伝子

研究概要

核内癌遺伝子産物C-MYCは細胞増殖・分化・癌化・死(アポトーシス)すべてに関与する多彩な機能を持つが、異なるパートナー因子との協調により異なる機能が発現されることが予想される。C-MYCがC末端付近に存在するb-HLH-Zip構造を介して同様の構造を持つMax等とヘテロダイマーを形成し、E-box配列を特異的に認識して転写調節を行うことが報告されて以来、E-box配列を含む様々な標的遺伝子が同定され、C一MYCの生理機能との関連が調べられてきたが、一方、c-Myc null細胞や転写活性のみを欠くMyc-Sフォームの解析により、C-MYCの機能発現機構の解明は新たな展開を見せ始めている。我々は、既に解析・報告してきたMSSPに加えて、酵母two-hybrid系を応用してcDNAを得た新規C-MYC結合タンパク質AMY-1およびMM-1について、発現様式・結合部位・生理機能等を検討した。AMY-1、MM-1はMSSPと同様に、b-HLH-Zip構造ではなくMyc family間で高度に保存され、C-MYCの転写活性化能・トランスフォーメイション活性に重要であるN末端付近のmycbox配列を含む領域周辺を認識・結合した。C-MYCの転写活性をAMY-1は増強し、MM-1は抑制した。AMY-1はマウス精巣において発現が高く、1〜8週齢では4週齢より顕著な発現誘導が見られたこと、雄のAMY-1トランスジェニックマウスが不妊傾向が強いことから、精子形成過程後期に重要な役割を果たしていることが示唆された。MM-1はmycのrasとの協調的トランスフォーメイション活性を抑制し、癌抑制遺伝子産物であることが示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Mori,K: "MM-1,a novel C-MYC associating protein which represses transcriptional activity of C-MYC" J.Biol.Chem.273. 29794-29800 (1998)
• [文献書誌] Ikuta,T.: "Structural analysis of mouse tenascin-X:Evolutionary aspects of reduplication of FNIII repeats in the tenascin gene family" Gene. 217. 1-13 (1998)
• [文献書誌] Kimura,K.: "c-Myc gene single-strand binding protein-1,MSSP-1,suppresses transcription of a-smooth muscle actin gene in chicken visceral smooth muscle cells" Nucleic Acids Res.26. 2420-2425 (1998)
• [文献書誌] Fujimoto,M.: "Characterization of an element positively regulating the transcription of MSSP gene-2 which encodes C-MYC binding proteins." Gene. 214. 113-120 (1998)
• [文献書誌] Taira,T.: "AMY-1,a novel C-MYC binding protein that stimulates transcriptional activity of C-MYC" Genes Cells. 3. 551-567 (1998)
• [文献書誌] Tsuchiya,T.: "Ku antigen binds to Alu family DNA" J.Biochem.123. 120-127 (1998)