研究概要 |
当施設で経過を追っているミトコンドリア遺伝子異常(特に1555変異)による難聴家系に対し、種々の聴覚検査や平衡機能検査を経時的に施行し、ミトコンドリア遺伝子異常による難聴の臨床的特徴を明らかにした。その結果、難聴は主として高音障害型、対称性のオージオグラムを呈し、ミトコンドリア遺伝子異常に伴う難聴は耳鳴を伴い進行性であることが明らかとなった。またベケシーオージオグラムや聴性脳幹反応から主たる病変部位が内耳にあることが推測された。難聴に比較し前庭機能は正常な症例がほとんどであった。また治療法として1555変異を持つ高度難聴患者に対しての人工内耳の有用性が確認された。今回、難聴に関連するミトコンドリア遺伝子異常(1555A-G,3243A-G,7445A-G)の検出を容易に行えるようにするための簡便なスクリーニング法としてMASA(Mutant Allele Specific Amplification)法を応用した簡便なスクリーニング法を開発し、制限酵素を使用する従来の方法(PCR-RFLP法)および直接シークエンス法の結果と比較検討した。その結果、MASA法はスクリーニング法として優れていることが確認された。上記スクリーニングにより難聴患者症例に占めるミトコンドリア遺伝子異常の頻度を検討したところ、感音難聴の約3%に、またアミノ配糖体抗生物質による難聴患者の約30%に1555変異が見出されることが明らかとなった。
|