研究概要 |
1. アルツハイマー病の脳の生化学的、組織化学的解析を系統的に行った。共同研究者のハタンパ博士はドレブリンが他のシナプス機能蛋白に比し、特異的低下を示すことを発見した。また、同時に正常の老化に従うドレブリン発現量の低下をヒト脳を用いて示した。また、ラット脳を用いてドレブリン含有シナブスの発生過程における変化を免疫組織化学的に解析した。生後0日から20日までのウイスターラットをホルマリン固定後、脳組織切片を作製し・ABC染色法および免疫蛍光染色を行った。生後10日齢以前ではドレブリンの分布には大きな変化はなく、細胞体,軸索,樹状突起でドレブリンが観察された。ところが14日齢ではドレブリンの局在は、既に樹状突起スバインに変化し、細胞体ではドレブリンは観察されなくなっていた。 2. 上記のドレブリン分布の変化が初代培養神経細胞においても観察されるかどうかを調べた。培養開始7日後:ドレブリンは突起に多く存在し、ドレブリン抗体により突起が連続性に染色された。また、細胞体ではドレブリンは細胞膜直下に集積していた。この時期には樹状突起スパインが形成され始めるといわれているが、ドレブリンの斑点状の集積はまだ観察されなかった。培養開始14日後:ドレブリンの染色像はほとんど斑状のものばかりとなるが、まだ細い突起は連続的に染まっている。培養開始21日後:ドレブリンの染色像は斑状のものばかりとなり、シナプトフィシン抗体との二重染色の結果から、ドレブリンの集積している場所は樹状突起スパインであることがわかった。以上より、ドレブリンの樹状突起スパインへの局在化はシナブスの機能成熟に一致して起こることが明らかとなり、神経活動依存的に局在化が起こる可能性が考えられた。
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