研究概要 |
免疫系の抗原受容体を介するシグナル伝達系は、これに会合するCD3分子、Igα/β分子に存在する活性化チロシンモチーフがチロシンリン酸化され、そこにZAP-70/Sykが会合して活性化される。一方、チロシンモチーフYxxφは、蛋白輸送に必要なAP複合体と会合することが判明した。両者のチロシンシグナルは類似しており、オーバーラップすると考えられる。我々は、生体内における、このようなチロシンシグナルの役割を、シグナル伝達と蛋白輸送との両者で解析した。 CTLA-4と会合する分子としてAP-2複合体のμ2鎖を同定した。一つのチロシンモチーフがチロシンリン酸化によって、シグナル伝達系とエンドサイトーシスの両システムで働くことが判明した。チロシンモチーフの変異CTLA-4分子の機能を解析し、CTLA-4を介する抑制は、チロシンモチーフ非依存的であり、これまで考えられてきたチロシンモチーフに会合するSHP-2を介していないと考えられる。 チロシンモチーフに会合するμ鎖では、エンドサイトーシスを担うAP-2のμ2、TGN/リソソーム輸送を担うAP-1のμ1、が知られていたが、今回、新たに3種類のμ鎖(μ1B,μ3B,μ4)を発見した。μ1Bは上皮組織特異的に発現し、細胞の極性を持った蛋白輸送に関与する。二種のμ3の内のμ3Bは神経系特異的に発現し、神経系独自な蛋白輸送系の存在を示唆する。これらの新規遺伝子の欠損マウスを作製中である。 TCR活性化シグナルは、CD3分子のITAMのリン酸化によって開始される。アンタゴニストペプチドによる刺激ではCD3ζ鎖の部分的なリン酸化のみが起こり、活性化制御に重要と考えられてきた。今回、ITAMのチロシンに変異をもつCD3ζ鎖Tgをζ鎖欠損マウスに導入したマウスにおけるT細胞分化と機能の詳細な解析から、ζ鎖のITAMが活性化されなくても、ほとんどのT細胞機能には質的な影響にないことが判明した。
|