研究概要 |
1.バングラデシュにおける調査:前年度に引き続き,北西部ナワブカガンジ県の2村落を対象とし,平成11年7-8月に調査を行うとともに,前年度・今年度の両調査で得た生体試料の解析を行なった.すなわち,水素化物発生-原子吸光法(HGAAS)による元素(砒素およびセレン)測定系を確立し,尿中As濃度ならびにAs毒性を修飾する可能性のあるSe濃度を測定した.その結果,対象者の尿中の砒素濃度の中央値は317μg/gクレアチニンであり,最低・最高値の間に約50倍もの開きがあって,狭い地域の中に大きな個体差が存在することが確認された.世帯間で見た場合,男女の尿中As濃度には相関があり,これは世帯によって異なる井戸を使用していることを反映しているものと思われた.さらに,尿中Asと使用している井戸水のAsには相関を認めた.皮膚症状は平均的には男の方でより顕著であり,1村落については,皮膚症状の程度と尿中As濃度とに男のみで相関が見られた.前年度に続いて,井戸水の病原微生物による汚染を新たに雨季に評価したが,検出状況に著しい季節差は認められなかった. 2.東北タイにおける調査:ヤソトン県の5村落を対象とし,平成11年7-8月に調査を行なった.計約500世帯の主婦を対象として.食物摂取・再生産・農薬の使用状況についての聞き取り調査,生体計測,採尿を行なった.また,有機りん系農薬への曝露指標である血中コリンエステラーセ活性の測定も行なった.その結果,農薬の使用がスイカ栽培に伴うものであること,女性も農薬に曝露される機会が多いことが判明した.
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