研究概要 |
ウイルス性下痢症の乳幼児死亡が開発途上国では大きな問題となっている。早期診断と治療が重要である。また新しいタイプの流行を調べることは、新興・再興感染症が問題になっている現在重要である。下痢症ウイルスには、ロタウイルス(RV)、アデノウイルス(Ad)。アストロウイルス(AV)、カリシウイルス(CV)などがある。(1)AVのラテックス試薬を開発し、臨床応用を可能とした。AVの型別のプライマーを作製し、RT-PCRによる型別を可能とし、わが国と海外の比較が出来た。いずれの国でも1型が多かった。しかし、北京での流行は5型であった。(2)RVはこの2年に1型が総じて主流を占めるが、世界的な傾向として9型が特に増えてきた。しかし韓国では4型が多かった。またこの数年ロタウイルスの流行が韓国、日本では1ヶ月ほど遅れ、2-3月にずれてきた。タイ国では年間を通じてロタウイルスが見られるようになった。遺伝子で比較すると同じ血清型でも国によって変異がみられた。また、中国でP[8]G1が主で、P[4]G1,P[4]G2などが見られた。リアソータントウイルスが出現していた。(3)アデノウイルスはPCR産物を制限酵素で切断することにより、容易に型別が可能となった。酵素抗体法で陽性の検体において、新しくデザインしたプラーマーを用いて行っている。41型以外も見られた。(4)カリシウイルスはわが国では初冬に多くみられた。韓国でも同様である。G2がどの国でも多い印象を得た。(5)中国ではドクダミが胃腸炎の治療に用いられている。抗ロタウイルス活性を調べたが有効ではなかった。ドイツとの共同研究で硫酸化コロミン酸およびカカオの成分に抗ロタウイルス活性があった。(6)日本、北京、ソウル、チェンマイ、タイでのロタウイルスの流行疫学を、2000年に特集としてまとめる予定である。(7)ロタウイルスワクチンは特に開発途上国で必要とされている。ワクチンが経済的の割に合うかを調べた。わが国では米国と同様なワクチンの経済的有益性が見られた。(8)カリシウイルスG2をバキュロウイルスを用いて蛾細胞に蛋白質発現可能となった。またアストロウイルスでは1-8型の共通エピトープ部分を用いて合成ペプチドを作製した。いずれも抗原・抗体の検出系の開発をワクチン開発を目的としており、今後進展させる必要がある。
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