先端的光学技術による神経成長円錐の伸展と接着の分子機構の研究

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10044248
• 研究機関: 東京医科歯科大学
• 研究代表者: 片山 芳文 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (20014144)
• 研究分担者: 古川 哲史 秋田大学, 医学部, 助教授 (80251552) ; 辰巳 仁史 名古屋大学, 医学部, 助教授 (20171720) ; 平井 恵二 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教授 (70156628)
• キーワード: 神経成長円錐 / カルシウムチャネル / クロライドチャネル / 細胞内カルシウム / 機械受容性 / コリンエステラーゼ / 電場感受性 / 接着性

研究概要

1.神経成長円錐の機械刺激で惹起される内向きホールセン電流の逆転電位は、細胞外液のC1イオン濃度により変化し、この変化はNernstの式に従った。内向き電流の薬理学的検討では、C1イオンチャネル遮断薬であるNPPBが有意な抑制効果を示した。成長円錐には機械刺激で活性化するC1イオンチャネルが存在すると結論された。
2.Fura-2を用いて成長円錐の細胞内Caイオン濃度を光学的に測定した。グルタメート放出に伴うCaイオン濃度の上昇はω-aga IVAとω-CgTxで抑制されたが、nicardipineの影響は無かった。ω-aga IVAとω-CgTxが存在すると14mM-Kイオン溶液ではCaイオン濃度の増加が起こらないが、47mMでは増加した。この増加はnicardipineを追加すると抑制された。金コロイドを用いた免疫学的方法ではnicardipine感受性Caチャネルの存在を確認できなかった。培養時には成長円錐形成とともに周辺にChE活性が発現することを組織化学的に確認した。
3.脊髄神経細胞を弱いDC電場中で培養すると神経突起成長の方向は基質の電荷と成長円錐の基質への接着性によって左右される。このことから、時間的、空間的に変化する接着性分子の発現状況が電場と相互作用しながら成長円錐の伸展方向決定を促していると結論される。
4.カバーガラス上面(poly-L-lysine処理)に培養した神経細胞の細胞膜を蛍光色素で染色して全反射型近接場光顕微鏡で観察した。高濃度Kイオン溶液で成長円錐に対応する部位の近接場光強度が上ることからガラス面側の細胞膜が基質に接近したと推定された。近接場光顕微鏡で得られたFluo-3蛍光像は通常の落射蛍光顕微鏡像と比べて小さく且つ斑点状で不均一であり、これらは膜直下でのCa分布を示すと考えられる。

研究成果

• [文献書誌] Zhao M, Dick A, Forrester JV & McCaiq CD: "Electric field-directed cell motility involves up-requlated expression and asymmetric distribution of the epidermal growth factors......."Molecular Biology of the Cell. 10. 1259-1276 (1999)
• [文献書誌] Zhao M, Forrester JV & McCaig CD: "A small, physiological electric field orients cell division"Proceedings of National Academy of Science USA. 96. 4942-4946 (1999)
• [文献書誌] Tatsumi H & Katayama Y: "Growth cones exhibit enhanced cell-cell adhesion after neurotransmitter release"Neuroscience. 92. 855-865 (1999)
• [文献書誌] Tatsumi H, Katayama Y & Sokabe M: "Attachment of growth cones on substrate observed by multi-mode light microscopy"Neuroscience Research. 35. 197-206 (1999)
• [文献書誌] Akagi T, Hashikawa T, Hirai K, Heino-Motelica I & Ttsuji S: "Electron spectroscopic imaging (ESI) of cobalt ions responsible for blockade of synaptic transmission and excitability of muscle cells….."Proceedings of Japan Academy. (in press). (2000)
• [文献書誌] Imai K, Tatsumi H & Katayama Y: "Mechanosensitive Cl^- channels on the growth cones of cultured rat dorsal root ggl neurons"Neuroscience. (in press). (2000)