研究概要 |
コレステロール生合成の後段階酵素の1つスクアレン・エポキシダーゼの遺伝子をクローニングし,ヒト遺伝子が第8染色体のテロメア近傍8q24.1に局在することを明らかにした。この部位はヒトの先天奇形で知られるLanger-Giedeon症候群の原因遺伝子が推定される部位と一致する。本症候群患者の遺伝子解析では未だスクアレン・エポキシダーゼが関わると同定された症例はなく現在も探索は進行中である。将来の遺伝子異常解析に備えるため,スクアレン・エポキシダーゼ酵素活性測定スクリーニングの簡便化,Biosensor開発の検討,遺伝子プロモーター領域の全塩基配列決定,転写開始点(ネズミ),ステロール応答領域の機能解析を行い,プロモーター領域ではSterol Regulatory Element(SRE)並びにNF-Y相同部位の存在を明らかにした。ノックアウトマウス以外に酸素欠損動物を作成する手段として,本酵素に対する阻害剤のスクリーニングを行い,緑茶から有効な阻害剤を見出した他,FAD,基質,阻害剤結合部位を測定した。ヒト本酵素の膜貫通部位は5個であることがPred.IIプログラムによるコンピュータ解析から想定され,生物種による相違を明らかにできた。スクアレン・エポキシダーゼ遺伝子異常は転写に関わるプロモーター領域の配列異常に基づく転写機能異常,遺伝子産物であるタンパク質のアミノ酸異常によるもの,酵素の代謝回転異常などの関与が推定されるが,解析のための基盤は整った。転写機構に関し胆汁酸をリガンドとするFXRの機能解析,オキシステロールをリガンドとするLXRsのスクアレン・エポキシダーゼ遺伝子のDown-regulationへの関与を明らかにした。
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