研究課題
国際学術研究
細胞間相互作用の素過程において、細胞表面の複合糖質糖鎖が果たす制御的役割は重要であり、我々はこれら機能性糖鎖による細胞間相互作用制御の分子機構の解明と、その人為的制御を目指している。本年の実績は以下のとおり。1. 脳・神経系におけるオリゴ・ポリシアル酸鎖の形成機構の解明とその制御:(1)哺乳動物胎児および成体脳においてオリゴシアル酸構造をもつ糖タンパク質が新たに数種類存在することを発見した;(2)ポリ・オリゴシアル酸の機能を探る道具として、十数種類の抗体の特異性を明確化し、更に新しい特異性をもつ抗体を作製した(投稿中)。また、微量オリゴシアル酸の検出定量のための蛍光標識法の開発を行った(Anal,Biochem.に2報発表)。2. 受精におけるKDN糖鎖、硫酸化シアロ糖鎖を介する配偶子間相互作用:(1)ウニ精子の酸性糖脂質が非イオン性界面活性剤に不溶性の膜画分に濃縮されて存在することがわかり、実際の細胞膜上でも糖脂質のミクロドメインを形成していることが示唆された。また、この膜画分がウニ卵の精子受容体に結合性をもつことを明らかにし、精子-卵接着部位を形成することが推定された(投稿中);(2)魚卵に既に神経細胞系において同定されたポリシアル酸合成酵素の相同酵素が存在することを見出し、卵におけるポリシアル酸合成酵素であることが示唆された(国際学会発表);(3)ニワトリ卵膜のシアロ糖タンパク質のcDNAクローニングを行い、これが哺乳動物の精子結合タンパク質ZPCホモログであること、更に生合成部位を決定した(Eur.J.Biochem.に発表)。3. がん細胞系におけるポリシアル酸鎖、KDN糖鎖の役割:種々の培養細胞の培地にManを添加するとMan濃度依存的に細胞内のKDN濃度が高まることを見いだした(投稿中)。卵巣がんの細胞に遊離KDNレベルが高いことが報告されており、細胞内Manレベルの調節の異変をもつ可能性が示唆された。
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