研究概要 |
1.洞房結節細胞ペースメーカー機能における筋小胞体の関与とその結節内部位差 ウサギ右心房標本に筋小胞体Ca放出チャネル阻害剤ryanodine(2μM)を添加すると、歩調取り部位が洞房結節中心から心房中隔寄りに移動し、洞房結節から心房筋への興奮伝播パターンが時計回転から反時計回転へと変化した。洞房結節多細胞微小標本では、ryanodineは結節中心の活動電位波形や自動能には有意の変化を及ぼさなかったが、分界稜に近い結節辺緑部ではryanodine添加すると拡張期脱分極が抑制されて自発興奮が不規則になった。筋小胞体Ca放出チャネル(ryanodine receptor)に対する抗体を用いたウサギ洞房結節の免疫組織化学では、心房筋や結節辺緑部の細胞では細胞膜の染色に加えて細胞内が縞状に染色されたが、結節中心の細胞では細胞膜のみが染色された。これらより、洞房結節細胞ペースメーカー機能における筋小胞体からのCa放出の関与は結節中心よりも辺緑部で大きいと考えられる。 2.洞房結節ペースメーカー細胞の活動電位数学モデルの構築 ウサギ洞房結節の単離細胞を用いた膜イオン電流解析の結果を基に、洞房結節中心及び辺緑部細胞の活動電位数学モデルを構築した。活動電位波形(拡張期電位、活動電位のtake-off電位、立ち上がり速度、振幅及び持続時間)や様々なイオン電流(I_<Na>,I_<Ca,L>,I_<to>,I_<Kr>及びI_f)阻害に対する反応は、洞房結節多細胞標本から得られた結果とよく一致した。結節中心から辺緑まで特性の異なる細胞を一列に繋いだ一次元モデルは、自発興奮が結節の中心から発生し、辺緑部を経て心房節に伝播されることが確認された。このモデルは洞房結節における細胞電気特性の多様性や結節内部位差の生理学的意義の検討に有用であると考えられる。
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