研究課題/領域番号 |
10044271
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研究種目 |
国際学術研究
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応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
塩田 浩平 京都大学, 医学研究科, 教授 (80109529)
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研究分担者 |
三浦 岳 京都大学, 医学研究科, 特別研究員
滝川 俊也 京都大学, 医学研究科, 助手 (90263095)
成瀬 一郎 京都大学, 医学研究科, 教授 (20113326)
畑山 巧 京都薬科大学, 教授 (10094484)
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キーワード | 熱ショック / 形態形成 / 脳発生異常 / 遺伝子発現 / 熱ショック蛋白 / 先天異常 |
研究概要 |
妊娠初期に熱性疾患やサウナなどによって高体温が持続すると、その児に神経管奇形、小眼球症、精神発達遅滞などの中枢神経系の発生異常が起るリスクが高くなる。本研究では、ニューロンの分化時期における高温負荷がニューロンの発生・分化と大脳皮質の構築に及ぼす影響について形態学的に調べるとともに、Hox遺伝子の発現と中軸骨格の発生に対する高温の影響を分子生物学的に調べた。 1. 妊娠12〜14日に毎日1回42または43℃の高温を10分負荷された母マウスから生まれたマウスの脳重量は対照群に比べて有意に低く、その影響は温度上昇と相関した。 2. 妊娠13または14日に高温負荷を受けたマウス胎児では、24〜48時間後の大脳組織の厚さが対照群よりも有意に薄く、皮質板の厚さも薄かった。 3. 妊娠13.5日の高温負荷により、胎児大脳のマトリックス細胞層における細胞増殖が4〜8時間にわたって有意に抑制された。 4. 妊娠14.5日の高温負荷により、マトリックス細胞層から皮質原基に向かう細胞の遊走が高温負荷後72時間にわたって抑制された。 5. 胎児大脳、特にマトリックス細胞層におけるアポトーシス(細胞死)が高温負荷群で有意に増加した。 6. 高温負荷をうけた胎児においてHox遺伝子の発現に異常が見られ、脊柱、肋骨など中軸骨格の形態的特徴がシフトするトランスフォーメーションが誘発された。 以上の結果から、ニューロンの増殖と遊走が活発な時期に胎児が一過性の高温ストレスを受けると、ニューロン前駆細胞の増殖と遊走が障害され、さらに細胞死が起ることによって脳の発育と組織構築に異常が起こると考えられた。また、高温は重要な形態形成遺伝子の発現を修飾することによって形態異常を誘発するととも確かめられた。ヒト胎児における高温による脳障害のリスク推定とその予防のために本研究組織で検討を続けている。
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