ヒト自己免疫疾患である進行性全身性強皮症のモデルマウス、TSKマウスは皮膚の硬化と肺における肺気腫を発症する。TSKマウスにおいて変異型fibrillin1の単離を行い、これが強皮症の原因遺伝子であるかを調べるため、前年度、変異型fibrillin1cDNAをchickenβアクチンプロモーターベクターに組み込み、そのベクターを用いて、受精卵注入し、トランスジェニックマウス4系統を作成した。 これらトランスジェニックマウスにおいて変異型fibrillin1の発現をRT-PCR法により確認した。この変異型fibrillin1トランスジェニックマウスは加齢とともに、皮膚の厚さが増加し、皮膚のヒドロキシプロリン含有の増加を示した。また、topoisomeraseIに対する、自己抗体の産生も認めた。しかし、TSKマウスにおいて認められるような、抗fibrillin抗体、および、肺気腫は認められなかった。また、変異型fibrillin1を発現ベクターに組み込み、DNAワクチン法により、野性型マウスに免疫したところ、ヒドロキシプロリン含有の増加を伴う一過性の皮膚厚の増加、および抗fibrillin1抗体の産生を認めたが、この方法においても、肺気腫は認められなかった。 以上の結果より、変異型fibrillin1がTSKマウスの強皮症症状の一部の原因遺伝子であると結論した。肺気腫の発症がこれら変異型fibrillin1の発現が不十分である可能性、2)変異型fibrillin1のごく近傍に肺気腫の発症の原因遺伝子がある可能性、がある。1)の可能性を検討するため、現在、keratin14プロモーターとelongation factorプロモーターを用いて、変異型fibrillin1トランスジェニックマウスを作成中である。
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