研究課題
国際学術研究
最近「各種オルガネラや生体膜の構築・機能分化に必ず膜ATPaseが関与していること」が世界的に確立されてきた。遺伝子クローニングにより、リン脂質フリッパーゼ、生体異物排出ポンプ、重金属イオンポンプ等の新しいタイプの膜ATPaseが無脊椎動物で次々と同定され、次いで脊椎動物においてもその存在が確認されだした。更に、これら膜ATPaseの発現・機能障害は、ヒトにおいては重篤な疾病の原因となることも判明した。ここでは、これら膜ATPaseの原点である無脊椎動物に焦点をあて、新しいタイプの膜ATPaseを探索し、それら膜ATPaseの機能・発現調節機構を分子・細胞レベルで解明する。本年度は、以下のような発展があった。1. Baumann(ポツダム大学)との共同研究により、ショウジョウバエの光受容細胞(視細胞)におけるNa/K-ATPaseの局在・細胞骨格(例えば、スペクトリン、アンキリン等)との関連を共焦点レーザー顕微鏡、免疫電子顕微鏡等を用いて明らかにした(1998年度米国細胞生物学会において発表・論文投稿準備中)。また、新型Na/K-ATPaseをクローニングし、既存のもの(染色体上の位置:93B)とは異なる(染色体上の位置:43C)ことを示した(1999年度第9回Na/K-ATPase国際会議で発表予定)。2. Krishna(ロンドン大学)との共同研究により、テトラヒメナの新型ATPaseを3種コードする遺伝子の全長をクローニングし、それらのアミノ酸配列を決定した.更に、それらを特異的に認識するポリクローナル抗体を作成し、これら新型ATPaseの細胞内の局在を明らかにした(1999年度第9回Na/K-ATPase国際会議で発表予定)。3. Fambrough(ジョンス・ホプキンス大学)との共同研究により、膜ATPaseのサブユニット間相互作用の構造・機能的意義の解明のため、サブユニット会合部位の結晶化を進めている。