研究概要 |
胸腺内のT細胞分化を誘導する微小環境は,胸腺上皮細胞とT前駆細胞の相互作用によって形成されるものと考えられていたが,必ずしも正確なデータに基づいた結論ではなかった.本研究ではマウス胎仔胸腺(FT)をデオキシグアノシン(dGuo)で処理したもの(dGuo-FT)へ前駆細胞を1個だけ移入する実験法によって,微小環境の形成にはT前駆細胞の存在が不可欠であり,B前駆細胞やミエロイド前駆細胞ではその機能を代行できないことを明らかにした.昨年度まではT前駆細胞として正常マウスのものを用いていたので,T系列細胞のどの分化段階のものが微小環境形成に作用しているのかわからなかった.今年度は,T細胞抗原レセプター(TCR)遺伝子の再構成ができずCD44^-CD25^+の段階で分化が停止するRag2^<-/->マウスのFT前駆細胞を用いて同様の研究を行った.その結果,Rag2^<-/->FT前駆細胞でも正常前駆細胞と同じく微小環境を形成する機能を有していることが明らかとなった.すなわち,微小環境の形成には成熟T細胞は必要でないことが示された. FT細胞を上皮/ストローマ細胞とT系列細胞に分画して,いくつかの遺伝子の発現をRT-PCRによって解析した.Notch1,Notch2,Jagged1,Jagged2は上皮およびT系列の両方に発現されていた,VCAM1,FGFは上皮側に発現されていた.これらの遺伝子の発現において,上皮/ストローマ細胞とT系列細胞との相互作用がどのようにかかわっているかという点について検討を始めている.
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