T細胞指向性HIV-1ウイルス感染補助受容体(SDF-1受容体・CXCR4)の生理的リガンドであるサイトカイン・SDF-1を用いて、サイトカイ受容体・CXCR4を標的とする対エイズ戦略樹立にむけて米国SALK研究所・Verma博士やNCIのO'Brien博士やフランスのINSERM・Durandy博士らとの国際共同研究を含む実験を行い、重要な成果を挙げた。 1.エイズ発症遅延型SDF1遺伝子多型によるエイズ発症遅延がどのようなメカニズムによるのかを解明することが重要課題となる。血中SDF-1濃度を測定する系・SDF-1TRFIA法を早稲田大学・CREST・松本和子博士らと共同開発し、エイズ発症遅延型SDF1遺伝子をホモ接合型でもつ個体について、米国・O'Brien博士から提供を受けたサンプルを測定中である。O'Brien博士らは、一時期血中SDF-1タンパク質濃度を測定できると自称する米国内のグループとの共同研究を地理的利便性のために検討していたが、信頼できる検量線と測定実績を有するのが我々のグループのみであることに気付き、我々と共同研究を続行している。このことは、我々のSDF-1測定系が現時点で最良であることを裏付ける結果となった。2.エイズ発症遅延のメカニズムとしてSDF-1タンパク質の量の差による競合阻害や感染補助受容体のダウンモジュレーションの程度の差との仮設が有力である。本研究で、マウスとサルの2種類の実験動物で、in vivoでSDF-1を過剰発現した場合に、実際にCXCR4ダウンモジュレーションがおこることを初めて示したことは意義深いことであると考えられる。3.米国とフランスと日本のヒトDNAについて、エイズ発症遅延型SDF1遺伝子多型と連関する遺伝子多型を検索中し、これまでに2カ所見出した。
|