ラットを用いて以下の結果が得られた。 A)血糖調節 哺乳類の概日リズムの生物時計が存在する視交叉上核(SCN)のvasoactive intestinal peptide(VIP)ニューロンとarginine vasopressin(AVP)ニューロンは交感神経の活動促進を介して血糖調節に関与することを示す結果を得た。 B)神経経路 多シナプス性に逆行輸送されるpseudorabies virus(PRV)を膵臓に注入し、その逆行性輸送を検討する研究により、1)SCNから膵臓を神経支配する多シナプス性の交感神経および副交感神経の投射が存在する、2)SCNから膵臓へ至る交感神経および副交感神経は共に、最初主に視床下部室傍核(PVH)と不確帯(ZI)に投射し、その後膵臓へ投射する、などを示す結果が得られた。 C)新規蛋白質の発見 SCNにて特異的に発現する2つの新規蛋白質(SCOPとB10)を発見、同定した。更に、1)SCOP(1696アミノ酸)はN末端からpleckstrin homology domain、leucine-rich repeats(LRR)、protein phosphatase 2C-like domainなどを持つ、2)SCNでのSCOPの発現には概日リズムがある、3)SCOPのSCNでの発現をantisense oligoにより抑制するとラットの活動の概日リズムが消失する、4)B10(1319アミノ酸)をCOS-7細胞に発現させるとPer1-3と結合し、それらを核へ移行させる、などが認められた。従って、これらの新規蛋白質の役割を今後検討したい。 D)生物時計の分子機構 研究分担者のBuijsらはCry1とCry2が概日時刻発信機構に重要であることを示す結果を得たで、抗体作成を試み、Per1、Per2およびCry1などの抗体作成に成功した。これらの抗体を用いこれら蛋白質の役割を検討中である。
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