本研究は歯科材料の中で特に劣化が大きな問題となっているコンポジットレジン(以下、レジン)に焦点を合わせ、その劣化メカニズムを解明することを目的としている。このため、フィラーの種類、含有量ならびに微小フィラー(MFR)の配合効果がレジンの耐磨耗性に及ぼす影響を検討した。通常、フィラー粒径は耐磨耗性に大きく影響するため、今回はできるだけ粒径(粒度分布)をそろえた試作コンポジットレジンを用い、粒径による影響を排除して実験を行なった。使用したフィラーは平均粒径が約3μmである4種の石英、溶融シリカ、バリウムおよびストロンチウムガラスと、1種のマイクロフィラーであり、いずれもシラン処理後、マトリックスモノマーBis-GMA/TEGDMA=50/50に、フィラー含有量を変えて試作レジンを調製した。臨床の磨耗量と比較的相関性の高い、アラバマ大学式あるいはミュンヘン大式咬耗シミュレーターを用い、各種試作レジンに10〜40万回負荷した後、ミュンヘン大開発の複眼式レーザーによる評価システムにてcontact-free wear量を計測した。その結果、磨耗量はフィラーの種類による有意差は見られなかったが、40%(以下%はすべて重量%)以下のフィラー含有量では溶融シリカが、それ以上ではストロンチウムの磨耗量が大きい傾向のあることが判明した。また、40%以下のフィラー含有量では他の単一種のフィラー含有レジンとくらべ、マイクロフィラー含有フィラーレジンが最も磨耗量が少なかった。次ぎに、フィラー含有量が磨耗量に及ぼす影響については、石英が40%、ストロンチウムガラスが60%そして溶融シリカ、バリウムガラスが70%に磨耗量の極大を示したが、その極大点からはフィラー含有量が増加するにつれ、磨耗量は減少した。また、単一種のフィラー60%にマイクロフィラー20%添加したハイブリッド型レジンは単一種フィラー80%のレジとくらべ磨耗量は減少した。以上の結果より、レジンの劣化に対しては構成要素であるフィラーの含有量、粒径および種類などが影響を及ぼすことが判明した。
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