増殖因子受容体の生物学的機能の発現には、リガンド結合にはじまる内因性チロシンキナーゼの活性化が必須であるが、本研究においては正常組織にも発現しているキナーゼ活性を持たない増殖因子型受容体研究を国際共同研究として行った。私共が見いだしたキナーゼ欠損型のEph ファミリー受容体、EphB6の生理機能を解明するために、キナーゼ欠損型受容体ErbB3とEphファミリー受容体研究のそれぞれにおいて世界をリードしている米国の研究者達と共同研究をすすめた。 今年度、研究代表者松井が平成11年9月にニューヨークに赴き、研究分担者であるAaronson、Bergemann、伊藤博士らと会合を行い、本研究の進捗状況ならびに本研究領域に関する最新の情報交換を行った。平成12年1月にはBergemann博士を神戸に招へいし、マウス組織切片を用いEphB6mRNA発現をin situ hybridization法にて検討するため、当該技術の習得のための指導を受けた。また、私共が行ってきたRap-in situ法による中枢神経系におけるEphB6リガンド発現の解析結果を評価いただくとともに、今後のEphB6の細胞生物学的機能解析法に関する情報交換を行った。さらに、私どもは昨年度に引き続き、EphB6遺伝子ノックアウトマウスの解析をすすめることにより、既知のephrinのなかでephrinB2が唯一EphB6に結合することを見いだした。当該マウスの中枢神経機能の解析をさらに進めるため、クリーブランド・クリニックに移籍した共同研究者中本賢博士にマウスを送付するとともに、マウス作成にたずさわった松岡博士を派遣し、人的・物的交流をさらにすすめ国際的学術共同研究を推進している。
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