研究課題
国際学術研究
発癌物質によるDNA付加体の高感度分析法開発のための分析標品として、発癌性ヘテロサイクリックアミンの一つIQのデオキシグアノシン付加体(IQ-dG)を化学合成した(小林)。この標品を持って渡英し、高速液体クロマトグラフィー・マススベクトロメトリー(LCMS)を用いて分析し、条件検討を行った(小林、ファーマー、トレーシー)。その結果、LCMSへの注入量として5fmolのIQ-dGが検出可能とわかった。これは紫外吸収による分析と比較して100倍以上感度が高く、また正常な核酸ヌクレオシドとの分離もよかった。IQ-dGは蛍光がないため、紫外吸収法以上の感度を得るには、これまでラジオアイソトープを用いる方法が専らであったので、LCMS法は有望と思われる。今後は、IQを反応させたDNAを合成し、IQ-dG付加体の分離定量法を開発する予定である。次いで、発癌性アルキル化剤によるDNA付加体の分析法開発のため、アルキル化剤処理したDNA試料を作成し(小林、シューカー)、渡英して試料中のO^6-メチルグアニンおよびN^7-メチルグアニンのLCMSによる定量を試みた(小林、根岸、トレーシー)。O^6-メチルグアニンの検出限界はLCMSへの注入量として200fmolであり、従来高感度とされる蛍光検出法に匹敵することがわかった。また、N^7-メチルグアニンの検出限界は2pmolと、O^6-メチルグアニンの10倍であった。N^7-メチルグアニンはグアニンとの分離が悪いため、従来の蛍光法では定量が不可能であったものをこの方法で検出定量できることがわかった。いずれの付加体の場合も、LCMSは分子量をモニターしているため、得られたデータの信頼性が高いという利点がある。今後、さらに高等生物試料中のDNA付加体定量などの応用研究も行う予定である。
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