研究概要 |
発癌性へテロサイクリックアミン(HA)は加熱食品中に含まれ、人への健康影響が懸念されている。その発がん過程でDNAに付加体を作ることが知られ、従来は^<32>P-ポストラベル法で検出されてきた。今回、非放射性かつ高信頼性の検出法を開発する目的で、高速液体クロマトグラフィー(LC)にマススペクトロメトリー(MS)を組み合わせるLCMS法を研究した。まず、HAの一つ2-amino-3-methylimidazo[4,5-f]quinoline(IQ)について、DNA中のデオキシグアノシン(dG)付加体(C8-IQdG)標品およびIQの付加したDNAを化学合成した。この標品を持って渡英し、LCMSを用いて分析し、条件検討を行った。LCMSはインターフェースとして大気圧イオン化法を用い、Multiple Reaction Monitoring法により分析した。IQdG標品はLC-UV検出により0.5pmol/μl(10^<-4>IQdG/dG 相当)まで、LCMSにより2.5fmol/μl(10^<-6>IQdG/dG 相当)まで検出可能と分かった。また、IQ付加DNAは酵素水解によりヌクレオシドとし、IQdG量を分析したところ、IQ付加DNAからIQdGを検出できることが分かった。次いで、発癌性アルキル化剤によるDNA付加体の分析法開発のため、アルキル化剤処理したDNA試料を作成し、渡英して試料中のO^6-メチルグアニンおよびN^7-メチルグアニンのLCMSによる定量を試みた。O^6-メチルグアニンの検出限界はLCMSへの注入量として200fmolであり、従来高感度とされる蛍光検出法に匹敵することがわかった。N^7-メチルグアニンはグアニンとの分離が悪く、従来の蛍光法では定量が不可能であったものを、O^6-メチルグアニンの10倍の感度(検出限界は2pmol)で検出定量できることもわかった。今後、高等生物試料中のDNA付加体定量などの応用研究も行う予定である。
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