研究概要 |
増幅したかん遺伝子が局在するDM(Double Minutes)は広範ながん細胞に見られる。我々は、DMが排出されることにより、がん細胞が脱がん化、分化することを見い出した。本研究では、DMの細胞内動態と微小核を介する排出機構の解明を目指している。平成10年度には、1)薬剤により誘導されるDMの排出は,DMが細胞質に生じた微小核へ選択的に取り込まれたのちに、それが細胞外に放出されることにより生じることを、詳細かつ定量的に実証することができた(投稿中)。2)DMの間期細胞核内での細胞周期の進行にともなう動態が明らかになってきた。すなわち、DMは、G1期に核膜のすぐ裏側に位置し、DNA合成に依存して核内部へと移行するという極めて特徴的な動態を示すことを明らかにした(I.Cell Science,1998)。さらに、正確な複製タイミングの計測により、DMは複製されるために核内部へ移行すること、および、増幅した遺伝子の局在場所により複製タイミングに大きな違いが生じることを明らかにした.(投稿準備中)。3)DMを選択的に取り込んだ微小核の形成機構が明らかになってきた。すなわち、DMは、染色体末端に付着することにより娘細胞へ分配される(ヒッチハイク機構)。DMを取り込んだ微小核が誘導される条件では、DMはヒッチハイクからはずれ、細胞質へ残る。このような細胞質のDMの多くは、G1期には核膜のすぐ外側に付着するように存在する。S期には、複製に不可欠なラミン蛋白質が大規模に再構成され、核膜外側のDMの周囲にそれが集結するため、核出芽様の構造を形成したのちに微小核形成に至る、という一連の過程が明らかになった(投稿準備中)。
|