研究概要 |
延髄孤束核(NTS)は末梢からの循環に関する情報収集と上位中枢からの反射調節を担う重要な部位である.n vivoやin vitroの実験において,興奮性アミノ酸をNTSに注入すると血圧低下や徐脈が生じる.一方で興奮性アミノ酸拮抗薬や抑制性アミノ酸を注入すると血圧上昇や頻脈が生じることが報告されている.これらは大動脈弓圧受容体からの抑制性神経線維(aortic depressor nerve;ADN)が投射するNTSニューロンの活動が投与物質によって変化した結果であることが示唆され,血圧調整に関するNTSの役割が解明されつつある.しかし,ADNから直接投射を受けているニューロン(mono-synaptic neuron)自身の生理学的特性は不明である.そこでADNが投射されているNTSニューロンを同定するために,生体においてADNにDiーIを注入し,その後作製したスライス標本においてDi-I染色陽性神経終末付着神経細胞を確認後,同細胞の電気生理学的特性を検討した. NTSにおけるADNの神経終末は殆どmedial NTSの樹状突起に付着しており,一部に細胞体に投射しているものが確認された. そこで,NTSにおいて1)細胞体に直接投射されているもの,2)樹状突起に投射されているもの, および3)ADNの投射を受けないものの3群に分類し,カイニン酸,GABA,グリシン,ATPやニコチンの作用を比較検討した.その結果,細胞体または樹状突起のADNからの投射を受けるものは投射を受けないものと比較し,カイニン酸の応答が有意に増強していた. 以上から,求心性ADNを介して大動脈弓圧受容器からの情報を受けるmedial NTSニューロンはnon-NMDA型グルタミン酸受容体が多く存在していることが明らかとになった.
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