本研究の目的は、グリア繊維性酸性タンパク質(GFAP)遺伝子をモデルとして神経・グリア細胞特異的な遺伝子発現調節機構を解明することである。本研究に最適な細胞系としてコロラド大学Sueoka研究室よりRT4細胞系を導入した。RT4細胞系として、神経系stem cell(RT4-AC)ニューロン様細胞(RT4-BおよびRT4-E)、グリア様細胞(RT4-D)が存在するが、GFAPの発現はACおよびD細胞においてのみ確認された。BおよびE、また非神経細胞のラット肝由来HTC細胞では、発現が全く観察されなかった。我々独自の研究成果としてこれまでに次の結果が得られている。 1 記RT4細胞系の各細胞の核分画を用いたレポーターアッセイにより、ラットGFAP遺伝子上に、約20bpのユニークなコア配列を含むユニークな抑制性(サイレンサー)エレメントが存在することを見出した。「このサイレンサーは、RT4-B、RT4-E、さらに非神経HTC細胞におけるGFAP発現抑制に関与していると考えられ、また5'上流エンハンサーに比べて極めて強力であることが判明した。 2 ゲルシフト法およびDNAフットプリント法によりこのサイレンサーエレメントに特異的に結合する分子を検索した結果、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)を含むタンパク質複合体である可能性が示唆された。 3 RT4-ACとRT4-Dを用いたcDNAサブトラクションライブラリーを作製し、グリア細胞への分化を促進する遺伝子の候補としてGCMやHes5を同定した。現在GFAP遺伝子発現にこれらの遺伝子がどのような役割を果たすのかについて解析を進めている。
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