岡崎研究グループは、哺乳動物細胞に広く使用できる第二世代の人工染色体の構築を目的とし、平成10年度に第一世代の前駆体YACを基に各種哺乳動物細胞中で使用可能な選択マーカーと目的遺伝子の組み込みが可能なlox配列を持つ第二世代の前駆体YACを構築した。本年度はこれをヒトHT1080細胞に導入することにより、第二世代の人工染色体の形成に至った。次に巨大遺伝子をデリバリーする哺乳動物ベクターとしての可能性を調べるために、配列特異的組み換え酵素Creを用いて人工染色体のlox配列にグリーン蛍光蛋白(GFR)の遺伝子を入れ込み目的遺伝子の発現を解析した。その結果、細胞内にGFPの発現が確認され、lox配列への目的遺伝子の挿入が可能なことを明らかにした。現在GFPの発現レベルを解析している。これまでHT1080細胞においては前駆体YACを基に新奇に人工染色体が形成されたが、マウス細胞では成功していない。このため微小核融合法(10年度に確立)を用いて、HT1080細胞内で形成された第二世代人工染色体のマウスA9細胞への移動実験を進めている。UCLAのMitani研究グループでは平成10年度より進めてきたヘルパー依存性アデノウイルスベクターにヒトテロメアとセントロメアアルフォイド配列を組み込んだAd/HAC新奇ベクターの構築に成功した。Ad/HACベクターの優位性を調べるためにHT1080細胞に導入し、人工染色体の形成実験を進めている。この共同研究に関する打合せのために岡崎が12月に、池野が平成12年2月にUCLAを訪問した。
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