岡崎研究室では巨大遺伝子領域を持つYACクローンを利用して細胞内で安定に維持される人工染色体(HAC)を形成する研究を進めた。これまでにYACクローンの腕部位をヒトテロメア配列、lox配列、哺乳動物用マーカーを持つ構造に変換した。今年度は、Cre/lox組み換え反応により改変YACクローンに挿入するための約100kbのアルフォイド配列を含む環状プラスミドを構築し、酵母内でのCre/loxの組み換えを進めた。組み換え後のYACDNAを酵母染色体DNAの混在なしに精製するために、岡崎が10月にHieter研を訪問して方法を検討した。また、HACを種々の細胞でベクターとして用いるためにlox部位を含むアルフォイドYACから形成されたHACを微小核融合法によりHT1080細胞からマウスA9細胞に移動する事に成功し、HACはA9細胞中でも安定に維持されることを確認した。さらにHACをマイクロインジェクション法によりマウス受精卵の前核に導入する方法について岡崎が10月にCHROMOS社を訪問して検討した。Mitani研究グループはこれまでにヘルパー依存性アデノウイルスベクターにヒトテロメアとセントロメア・アルフォイド配列を組み込んだAd/HACベクターの構築に成功した。本年度はこれを精製したDNAとして通常のリポフェクション法によりHT1080細胞に導入し、得られたトランスフォーマントに人工染色体の形成が観察された。岡崎と池野は平成13年3月にMitani研を訪問し、Ad/HAC-DNAをアデノウイルス粒子として感染させた場合に人工染色体が形成されるかどうかFISHによる検討を行った。
|