人工染色体を哺乳動物細胞への遺伝子導入に利用するための基礎技術の開発を目的に、コロンビア大学Hieter教授とカリフォルニア大学Mitani助教授との共同研究を行った。岡崎研究室では巨大遺伝子領域を持つYACクローンを利用して細胞内で安定に維持される人工染色体(HAC)の形成を進めた。YACクローンの腕部位をヒトテロメア配列、loxP配列、哺乳動物用マーカーを持つ構造に変換した。次に、Cre/loxP組み換え反応により改変YACクローンに挿入するために100kbのアルフォイド配列を含む環状プラスミドを構築し、酵母内でのCre/loxPの組み換えを行った。組み換え後のYAC-DNAを酵母染色体DNAの混在なしに精製するために、Hieter教授とその方法を検討した。また、HACを種々の細胞でベクターとして用いるために、loxP部位を含むアルフォイドYACから形成されたHACを微小核細胞融合法によりHT1080細胞からマウスA9細胞に移動する方法を確立し、移動されたHACはA9細胞中でも安定に維持されることを確認した。Mitani研究グループとの共同研究としてヘルパー依存性アデノウイルスベクターにヒトテロメアとセントロメア・アルフォイド配列を組み込んだAd/HACベクターの構築に成功した。これをDNAとして精製した後にリポフェクション法によりHT1080細胞に導入し、得られたトランスフォーマントにおける人工染色体の形成を解析している。Ad/HAC-DNAをアデノウイルス粒子として細胞に感染させた場合に人工染色体が効率よく形成されるかどうかが今後の課題である。
|